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夜間保育園の経営

夜間保育園とはどのような施設か、開設・経営するにはどのような条件が必要なのかなどの情報をまとめました。

認可夜間保育園とは

夜間保育園とは、その名の通り夜間や深夜に子どもの保育を行う施設です。認可夜間保育園には専用の基準が設けられており、定められた開所時間は11時~22時。仕事などの事情で保護者が子どもを保育できない場合、夜間保育園が代理として預かり保育を実施します。

認可夜間保育園ができた背景には無認可のベビーホテルで起きた死亡事故があり、これを機に制度を見直したのがキッカケ。1981年に厚生労働省が夜間保育園を制度として認証し、モデル事業としてスタートしました。

夜間・深夜の保育で行う内容は園の方針や利用時間などによりますが、一般的な日中の保育とはやや異なります。主に18時以降は1日の疲れを癒す時間となっており、食事・入浴・休憩・睡眠が中心となっているようです。

認定夜間保育園の設置基準

認定夜間保育園の設置基準は以下の通りです。

入所対象 保護者の就労等で夜間の保育に欠ける児童
定員 20名以上
開所時間 原則11時間とし、おおよそ午後10時までとする。
設備基準
  • 仮眠をするための設備、その他夜間保育に必要な設備・備品が完備されていること
  • 既存の保育施設に夜間保育所を併設する場合は、直接児童の保育に使用する設備が専用のものであること。ただし、管理部門については運営に支障のない範囲で既存の設備と共用でも差し支えないこと。
  • 地域の事情に応じて分園を設置することが可能。
職員 施設庁は保育士の資格を保有しており、児童の保育に直接従事できる者を配置するよう努めること。
保育士は、児童福祉施設最低基準に基づいた所定の人数を配置すること。
設置経営主体 夜間保育は生活面への対応・個別のサポートが強く求められることから、児童の保育に関して豊富な経験を持っており、良好な成果をおさめていることが求められる。

認可夜間保育園を経営するための注意点

夜間・深夜の保育サービスを提供している認可保育園は全国でも数少ないのが現状。現時点で全国に81ヵ所しかなく、24時間保育を実施している施設にいたってはほんの6ヵ所に留まっています。保護者の勤務事情の変化や共働き世帯が増えたことで高まる夜間保育のニーズに応えているのは、現時点だとほとんどが認可外保育園となっているのです。

夜間保育と聞くと、「夜間に子どもを預けたりすると成長に影響が出るのでは?」と感じる方も多いと思います。しかし、1998~1999年にかけて行われた全国夜間保育園連盟と大学による共同調査によると、「夜間保育における子どもたちの心身に悪影響は見られない」という結果が出ています。子どもたちの健やかな発育は夜間・深夜保育といった保育形態ではなく、家庭における育児環境および育児への自信・サポートの有無が大きく関連していたと報告されているのです。

もちろん、夜間保育を避けることができるなら可能な限り避けた方がよいでしょう。しかし、さまざまなニーズに対応していく施設の存在も非常に大切です。夜間保育園を開業したいと思うなら、子どもを預ける保護者の気持ちに寄り添い、手厚いサービスを提供していくという理念が必要となるでしょう。

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認可夜間保育園の需要

フルタイムで働く方や、午後〜夕方〜夜にかけて仕事をする親にとって、認可夜間保育園はまさに「救世主」とも言える存在です。17時が定時の会社だったとしても、終業後の残務整理や会社から保育園までの移動時間を考えれば、保育園に子供を迎えに行けるのは18時を過ぎてしまうことは珍しくありません。そうなれば、通常の保育園ではなかなか夕方以降、預かってもらえるところがありませんので、親としては困り果ててしまうわけです。

加えて一昔前と違って、血縁や地縁による子育てサポートが受けにくい現代。2000年に日本保健福祉学会誌に掲載された保育園施設長・保育専門職へのインタビューを通じた研究報告では、夜間保育のニーズの高まりの要因の一つとして、離婚率の上昇も指摘されています。

女性の社会進出による保育ニーズの一般化や、男女雇用機会均等法による職種及び就労時間の多様化などにより、夜間保育のニーズも高まっている。さらに、昨今の離婚率の上昇は、生計維持のため夜間に及ぶ二重就労を必要とする母親の増加にも連動している。

出典:『夜間保育サービスの今後の課題に関する研究 : 施設長・保育専門職のグループインタビューを通して』日本保健福祉学会誌 7(1),2000
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hwelfare/7/1/7_KJ00007499460/_pdf/-char/ja

こうした現状からも、夜間保育へのニーズは高く、厚生労働省が公表しているベビーホテル数は、平成27年度時点で全国に6,923か所。入居児童数は約3万人と報告されています。

認可外ではなく認可であることの意義

認可夜間保育園の数が伸び悩む一方で、認可外夜間保育施設(ベビーホテル)が全国に7,000近くあることは、夜間も働く親世代の駆け込み寺的な存在として、夜間保育園が必要とされている現状を象徴しています。

とはいえ、夜間保育は子どもの規則正しい生活リズムを調整することが難しかったり、家庭で過ごす時間や安らぎの時間が不足しがちだったりと、夜間保育ならではの難しさがあります。また、夜間保育を利用する保護者の中にはシングルマザーやシングルファザーなども多く、子どもの愛情不足の可能性も否めません。

要するに、日中の保育よりも夜間保育は子どもの成育を見守るという観点で、非常に難しく、大変な課題と向き合うことが多いのです。

認可外夜間保育園(ベビーホテル)の中で、行政の立ち入り調査の結果指導監督基準に適合していないと指導・勧告・公表のいずれかを受けた施設は、平成27年度だけでも約500。認可外夜間保育の半数を占めています。

こうした現状を踏まえると、きちんと認可を受け、子どもの成育や親のサポートができる“保育力”のある夜間保育園が必要とされているのです。

なぜ認可夜間保育園は少ないのか?

とはいえ、認可夜間保育を必要とする子育て世帯が多い一方で、夜間保育を行う認可夜間保育園の数はそれほど多くありません。認可夜間保育園の整備が進まない理由はいろいろありますが、主な理由として次のようなことが指摘されています。

保育士の確保が難しい

保育園不足の背景の一つとして指摘されているのが、保育士不足の問題です。子どもの成長を見守り支えるという大切な役割を担う専門職である保育士は、介護士と同じく給与額の低さなど、待遇面での問題が指摘されています。

夜間保育は、通常の保育に加えて子どもの安全を保証するなど大切な役割を担っているものの、夜勤手当のなどの処遇は決して高くありません。また、男性保育士も給与の低さなどから導入が難しいと感じる保育園も多く、保育士の確保は夜間保育園の大きな課題です。

公的支援が少ない

もう一つ、認可夜間保育所が増えない理由としてあげられるのが「公的支援の不足」です。 ただでさえ待遇の低さが取りざたされている保育士は、夜間保育以外の保育園でも確保が難しいという現状があります。

ところが、認可夜間保育園の職員配置基準は昼間と同じで、夜間保育に従事する職員への給付加算は微々たるものです。

全国夜間保育園連盟とは

全国夜間保育園連盟とは、全国にある認可夜間保育園のほとんどが加盟している組織のことで、研修や交流会などを行ったり機関誌を発行したりして、認可夜間保育園をサポートしています。

全国夜間保育園連盟の加盟数

全国夜間保育園連盟に加盟しているのは、全国で約60ヶ所ほど。ほとんどの認可夜間保育園が加盟しているとはいえ、その全体数が少ないので加盟している保育園もそれほど多くありません。

全国夜間保育園連盟の活動

全国夜間保育園連盟では、認可夜間保育園のための研修や交流会を開催しています。 平成28年に東京で行われた交流研修会では、大学の学長や保育園園長、読売新聞の研究員などによるシンポジウムや、大学教授による講演会などが行われました。

ほかにも、大阪や福岡などでも交流研修会が開かれ、これからの夜間保育のあり方や食育の重要性などを伝える講演会が行われています。

また、機関誌「夜間保育」を定期的に発行しており、夜間保育の必要性や待機児童対策など、昨今の保育事情についての情報や考察を網羅しています。この紙面上にて交流研修会のお知らせや、過去に行われた会場写真や様子を載せていますので、遠方で参加できない人も雰囲気を感じることができます。機関誌のバックナンバーは全国夜間保育園連盟の公式サイトで閲覧できます

論文や論壇について

全国夜間保育園連盟では、夜間保育に関する論壇の資料や研究論文を公開しており、公式サイトで誰でも閲覧できますので、夜間保育園の入所を考えている人や、これから夜間保育園を開業したい人の助けとなっています。

研究論文は「夜間保育の子どもへの影響に関する研究」というもので、夜間保育によって子どもの発育には悪影響が出ないということを明らかにしており、今後夜間保育園を広めていく際の重要な資料として活用されるでしょう。

全国の認可夜間保育園を紹介

全国夜間保育園連盟では、加盟している全国の認可夜間保育園を紹介しているので、加盟することによって夜間保育園を探している人の目に留まりやすくなり、入所者を増やすことにもつながります。

今後、認可夜間保育園を開業した際には、認可夜間保育園に加盟することによって大きなメリットを受けられるでしょう。

全国夜間保育園連盟とメディアとのかかわり

全国夜間保育園連盟では、NHK総合のドキュメント72時間「福岡・中洲 真夜中の保育園」の放映や、ヤフーニュースに掲載された全国夜間保育園連盟天久会長の、歓楽街にある「どろんこ保育園」などを紹介しており、メディアを通しても夜間保育園の存在をアピールしています。

また、最近話題のドキュメンタリー映画『夜間もやってる保育園』も推薦しています。 この映画は、新宿歌舞伎町に隣接する大久保で24時間保育を行う「エイビイシイ保育園」を舞台としており、少子化や待機児童、子どもを預けて夜間に働く親の問題などを取り上げています。

この映画には「エイビイシイ保育園」をはじめ、全国夜間保育園連盟に加盟しているいくつかの夜間保育園が登場しています。2018年現在、好評につき1/20(土)~2/2(金)のアンコール上映が決定しているほか、全国各地での自主上映会も決まっています。

こうしたメディアでの活動が広まれば、多くの人に夜間保育園の必要性が伝わり、夜間に子どもを預けることへの偏見もなくなることが期待できます。全国夜間保育園連盟は、夜間保育園を開業する人や利用する人だけでなく、利用したいと感じている人のサポートの一助としても活躍しているのです。

【参考URL】

参考:全国夜間保育園連盟』
http://www.zenyahoren.jp/

参考:ドキュメンタリー映画『夜間もやってる保育園』
http://yakanhoiku-movie.com/

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