保育園での熱中症対策
保育園での熱中症対策は必須
毎年5月から9月にかけてが、熱中症にかかりやすい時期です。ピークの時期には1週間で1万人前後が救急搬送されるというデータも出ています。保育園を運営していくうえで、子どもたちの安全・健康を守るために熱中症対策も必ず行わなければなりません。
子どもは自分では体調の変化に気付きにくいため、保育士をはじめ大人が体調管理をする必要があります。例えば、子どもは夢中で遊んでいるうちに脱水症状を起こす可能性もあるため、こまめな水分摂取や休憩を呼びかけることが大切。しかし対策を徹底していても、急変してしまう可能性に備えて正しい処置方法も知っておきましょう。熱中症は重症の場合には命を落とす危険もあります。子どもたちを守るためにも、保育園での熱中症対策を一度考えてみましょう。
子どもは熱中症になりやすい
大人と比べて体温調節が苦手
子どもは大人と比べて 体温調節機能が未熟なため、熱中症にかかりやすいのが特徴です。筋肉や臓器などの器官が未発達であると、体内に水分や電解質を留めておくことができません。本来は汗をかくことで体温を調節しますが、子どもは体内の熱を外に逃せず熱中症にかかってしまいます。
幼い子どもの体は約70%が水分で、気温の変化を受けやすくなっています。体内に熱がこもると熱中症のリスクが上がるので注意が必要です。
地面からの反射熱を受けやすい
子どもは身長が低いため、地面からの熱が成人よりも伝わりやすく、注意が必要です。例えば地面がアスファルトで舗装されている場合、表面の温度は60℃を超えることがあります。5歳児の身長は約100cmなので、子どもの生活圏の気温が高いことが理解いただけるでしょう。
外気温は地上150cmを基準として計測されています。 仮に最高気温が30℃の場合、子どもの周りの体感温度は35℃まで上昇することがあるのです。日陰のないところで長時間過ごす場合、熱中症対策を行う必要があります。
自分で体調不良に気付きにくい
子どもは自分で体調不良を把握することができません。遊びに夢中になってしまうと、喉の渇きや体温の上昇に気付かなくなるのが原因です。
自分で判断して水分補給ができないので、脱水症状を起こしてしまう可能性があります。 周りの大人が気にかけて水分補給を促してください。
熱中症の4つの種類
熱失神
熱失神では以下の症状が出ます。
- めまい
- 顔面蒼白
- 不整脈
熱失神は体温の上昇を抑えるために、全身に大量の血液を送り一時的に酸欠になることが原因で起こります。脳への血流が不足すると酸欠を起こしてめまいや立ちくらみが生じます。また脱水を起こした場合にも熱失神になる可能性があります。
熱疲労
熱疲労の症状は以下の通りです。
- だるさ
- 吐き気
- 頭痛
- 判断力の低下
熱疲労の原因は脱水症状です。人の体は体温を下げるために大量の汗をかき、体から水分が排出されます。無事に熱を放出できたとしても失われた水分の補給が間に合わなければ脱水を起こします。脱水症状が続くと、倦怠感や頭痛、吐き気などの症状が現れるのです。
熱けいれん
熱けいれんを起こすと以下のような症状が出ます。
- 筋肉の痛み
- 筋肉のけいれん
熱けいれんはナトリウム濃度の低下によって起こります。体温を下げるために汗をかくと、体内からナトリウムが排出されます。汗をかくと水分補給を行いますが、水を飲むだけではナトリウムの補給ができません。ミネラル入りの麦茶や経口補水液を飲まなければ失われたナトリウムは補給されず、熱けいれんが起こります。
熱射病
熱射病の症状は以下の通りです。
- 高熱
- 意識がない
- ろれつがまわらない
熱射病は意識障害の発生によって起こります。人の体は体温が上がりすぎると、体温調節機能が働かなくなってしまいます。熱射病の特徴は発汗が見られなくなることです。熱射病の疑いがある場合には、脇の下や足の付け根をすぐに冷却してください。対応が遅れると命に関わる危険性があります。
保育園で行うべき熱中症対策
こまめに水分補給をさせる
熱中症を予防するにはこまめに水分補給を行うことが大切です。喉が渇いたと感じた時点で体内の水分はすでに失われているので、早めに水分補給を行わせましょう。
水分補給を行うタイミングは、 外に遊びに出る前、 外から屋内に戻ったとき、 お昼寝の前、 トイレに行った後などが適しています。また、水よりもナトリウムを補給できる飲み物が良いです。 ミネラル入りの麦茶なら年間を通して子どもたちに飲ませやすいですし、スポーツドリンクにもナトリウムが含まれています。ただし スポーツドリンクには糖分が多く含まれているので、水で薄めて飲ませるのが良いでしょう。
暑さや日差しを避ける
暑さや日差しを避けるために、気温が高くなる時間帯は子どもたちが外に出ないようにしてください。外遊びのときには頭部や首元を日差しから守るために、日除け付の帽子を被らせます。
また、風が吹いていないと体感温度が上がってしまうので、屋外での活動を避けることをおすすめします。
屋内での熱中症にも気を付ける
屋内で過ごしていても熱中症にかかるリスクがあります。気温が高くなる13時から15時の時間帯には注意が必要です。室内の温度が上がらないように遮光カーテンやすだれを使用しましょう。湿度が高くなると体温調節機能が低下しやすくなります。エアコンとサーキュレーターを併用して、室内の空気を循環させると効果的です。
熱中症の応急処置
熱中症にかかってしまった場合の応急処置をまとめています。
軽症の場合
軽症の場合には、すみやかに日陰や屋内に移動させてください。屋外の場合は風通しの良い場所、室内ではクーラーの効いた部屋がベストです。首や脇の下、足の付根など太い血管の通る部分を冷やすことで、上昇した体温を下げられます。
麦茶や薄めたスポーツドリンクを飲ませて、失われた水分とナトリウムを補給します。塩分補給には塩飴や塩タブレットも効果的です。
中等症・重症の場合
中等症・重症の場合には、病院を受診する必要があります。意識を失っている場合はすぐに救急車を呼んでください。嘔吐や意識不明の状態なら、窒息の恐れがあるので、絶対に水分を飲ませてはいけません。救急車が到着するまでは救急司令センターの指示に従いましょう。