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異年齢保育の定義と特長

ここでは、異年齢保育(縦割り保育)の教育理念やメリットとデメリット、教育法になどの情報をまとめています。

異年齢保育(縦割り保育)とは

異なる年齢の子どもたちを同じクラスで保育

異年齢保育はさまざまな年齢の子どもたちの保育を同じクラスで行うことを言い、別名「縦割り保育」や「混合保育」とも呼ばれます。これまで日本では子どもの年齢によってクラスを分ける、同年齢保育を主流としており、異年齢保育は、子どもの人数が少ない保育園や、海外の教育理念を取り入れた保育園で導入される傾向がありました。

異年齢保育の導入方法は主に2種類。1つは、年齢にかかわらず全ての子どもたちに対して異年齢保育を行う方法。完全縦割り保育制で、全クラスが異年齢保育となるのが特徴です。もう1つは、1週間のうち数日間だけを異年齢保育(縦割り保育)とする方法で、園の方針によって更に色々な種類があります。

異年齢保育の主な目的

異年齢保育の主な目的は、社会性や協調性の向上です。自分より年下の子たちと交流する時は、見本となる行動をとろうと考えたり、お世話をしたり、同年齢の子と接するときとは異なった接し方を意識するきっかけになります。年下の子たちのお世話を通して、優しさや思いやりを育む機会も得られるでしょう。反対に、自分より年上の子たちと交流する場合、遊びながら自分の意思を伝える練習ができます。

社会は同年齢保育のように同じ年齢の方だけで構成されていません。異年齢保育では、そういった点で社会性を身に着け、将来に役立つ経験を得られます。

異年齢保育(縦割り保育)のメリット・デメリット

メリットが多いように感じられる異年齢保育。ここでは、子ども側、運営側それぞれの立場にとってのメリット・デメリットを解説します。

子どもたちにとってのメリット

異年齢保育を受ける子どもたちは主に3つのメリットを得られます。1つ目は、社会で役立つ人間同士の関わり方を早い段階で学べる点です。同年齢保育は、小学校、中学校、高校と同様、同じ年齢の人が集められたクラス分け制ですが、社会ではさまざまな年齢の方と働いたり交流したりするもの。異年齢保育は、社会性を身に着けるスタート地点でさまざまな年齢の子と接することができるため、相手の年齢に左右されないコミュニケーション能力や思いやりを育めます。

2つ目は、友達の幅が広がりやすいというメリットです。同年齢保育と違いさまざまな年齢の子ども、つまり多様な価値観を持った子どもたち同士で交流する環境に身を置くことになるので、幅広い年齢層の友達ができます。遊びひとつとっても、年上・年下の間で異なるルールを考えたり、それぞれに違った興味感心を持ったりしながら互いに歩み寄る経験ができるでしょう。

3つ目は、思考力や想像力を学べるというメリット。自分にとって簡単なことが年下の子にとっては難しいことも。その場合、年上の子は何をどのようにすれば助けてあげられるのか自力で考えるようになります。

また年上年下にかかわらず、さまざまな価値観を持った同士で交流することで、問題にぶつかった場合都度新たな解決策を考え出そうとするきっかけを得られるのも、異年齢保育の特長です。

保育士にとってのメリット

保育士や保育園経営者にとってのメリットは、子どもたちに、日常の中で色々な人と関わるという経験を与えられる点です。保育士が年上・年下への接し方やコミュニケーションを1から教えるだけでは、子どもたちにとって実感のわかないものとなる可能性も。日々を通して、子どもたち自身が年上・年下と接して、思いやりや助けあいを学ぶことで、時には年下同士のけんかに年上の子が仲裁に入るような、さまざまな経験を積めます。

子どもたちにとってのデメリット

子どもたちにとってのデメリットは、力関係の差によるトラブルが生じたり、全員一緒には楽しめない可能性が生じたりする点です。年長者や体の成長が早い子の中には、年下の子などへぶつかることでストレスを発散したり、物をとったりしてしまう子が出てくる場合も。年下の子たちや人より大人しい子、静かな子は、そういった年長者に対してストレスを感じてしまい、保育園へ行くのをためらうリスクも生じます。

また、年下の遊びに合わせ続けることで、年上の子たちが飽きてしまうデメリットも考えられるでしょう。年齢によって「楽しい」「つまらない」と、感じ方に差が出てくるのは当然のこと。年上の子にとって物足りないと感じる遊びもあれば、年下の子にとって難しすぎる遊びもあります。

保育士にとってのデメリット

年齢差から生じる力関係が原因となって起こる、いじわるやトラブルを防ぐために、日々各クラスの動向をチェックする必要が出てきます。けんかや物の取り合いなどによるケガを防ぐよう、危機管理を厳しく行う場面も増えるため、気を使う場面が増えるというのが、想定しうるデメリットです。他にも、自分と離れた年齢の子と接するのが苦手な子に対してフォローやサポートをする、年長者へ乳児に対する接し方を教えるなど、保育の負担が大きくなりやすい点もあげられます。

教育法

ここからは、異年齢保育をベースにした3つの教育法について紹介していきます。

モンテッソーリ教育法

モンテッソーリ教育法とは、イタリアの医師マリア・モンテッソーリ氏が考案した教育法。主に子どもの自主性を重視した教育法で、「子どもには自分を育てる力が備わっている」をベースに教育を考えていくのが特長です。そのため、子どもたち自身が、自分で興味関心のある物事へ取り組んでいきます。

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イエナプラン教育法

ドイツで生まれオランダで発展したイエナプラン教育法は、自己を知るだけでなく他者についてよく知り、良さを発見しながら協調性を育む教育法です。同年齢保育で生じてしまう、競争意識や優劣の意識を持つというリスクを避けるため、各学年のクラスを一緒にしています。

ピラミッドメソッド幼児教育法

ピラミッドメソッド幼児教育法は、保育者の主体性や子どもの主体性、寄り添うこと、距離を置くこと、という4種類の概念をベースにした教育法。モンテッソーリ教育法、イエナプラン教育法と同様、子どもの主体性を重視しています。また、協調性や社会だけでなく、学習意欲の向上も目的としているのが特長です。

注意点

最後に、異年齢保育を取り入れる際の注意点について紹介します。

安全面に配慮する

運動能力は個人によって異なり、年齢によっても大きく変わります。そのため、各年齢の子たちが安全かつ楽しく遊べる環境となるよう、日ごろから安全対策を徹底し、子どもたちの行動をチェックすることが大切です。

年上や年下それぞれの負担にならないようフォローする

異年齢保育では、年上の子が年下のお世話に時間をかけすぎて疲れたり、年下の子が年上の子に委縮したりといったリスクも。年上の子や力の強い子たちのみが遊んでいるような状況であれば、保育士が叱ったり教えたりする必要が出てくる場合もあります。子どもにとっての「1歳差」は知能、体力双方の発達において大きな差。子ども1人1人の行動や態度、話している内容などを細かくチェックしながらサポートしましょう。保育士は、子どもたちの負担を軽減するのも仕事なので、自主性だけでなくサポートにも目を向けられるよう、あらかじめマニュアルを作成したり、保育士同士で情報共有したりするのも重要です。

年齢に合った遊びを保育士が用意

全年齢が参加できるような遊びは、必然的に年上の子にとって簡単すぎるものになります。時には年齢別の遊びを取り入れて、乳幼児や年長者それぞれが、力いっぱい楽しめる時間を作るのことも大切です。

室内遊びであれば、0~2歳の子に絵本の読み聞かせ、3~5歳の子にごっこ遊びをすすめるなどといった方法も考えられます。年齢や好みで常にグループが分かれており、決まったメンバー以外ではまったく交わらない、という状況になった場合も、保育士がフォローを入れる必要があります。

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